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ねこの嘘

結構毛だらけ

気づいた時に私は始まっていて
頬杖をついてカウンターの真ん中で隣にばくれん、くどき上手、山本、開けたての豊盃

隣の男女は酒の勢いに任せて、じゃれあっていて年増の女が若い男を誑かしている、女の指は細くて白く、光らなくていい結婚指輪がぬらぬらと光って眩しいな

服装でなんとか誤魔化していても結局目元と口元に真実が現れてしまってきっと男よりは十ほど上だろうか
酒を飲み進める二人を盗み見て
かんがえる
このふたりの遊びは果たして明け方までもつのだろうか
どちらが、ホテル代を出すんだろう
安いラブホテルか
気取ってシティホテルか
することは同じなのに

雨が降ってきた

きっと男は、朝になってこの女を抱いたことを後悔するだろうな
カウンターの照明の下で艶やかに見えた髪や口元は
どうだろう君の腕枕に預けて眠る女のその肌は
刻一刻皺が深くなってはいませんか

腕枕をやめて、深妙な気持ちになる
この女が起きてしまう前に、帰りたい、ああ帰ってしまいたい、と、願う
いやその前にもう一回

女が、甘い声を出して寝返りをうつ




そんなストーリーはどこにでも転がっていて
おかしくてかなしい酒の席



漂白剤のせいで荒れ切ったわたしの手
さて今宵もあいもかわらずその先手を繋ぐひともいないので
ポッケに押し込んで、濡れながら帰る


じぶんは、気づいた時に始まってしまっていた


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