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ねこの嘘

結構毛だらけ

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次に会う時は喋ることさえ、ううん多分息することさえ忘れているよ
最後のおばあ孝行だね
さらっという母と、さらっと受け止める娘
足元に南国の春を待つ雨水流れ流れて
この森に注いで
土に濾されて無色透明の水水水
小川になって海に注ぐやんばる

蟹、海老、捕まえたでしょう
小さい頃のなつかしい記憶


死に直線に向かう白髪の老婆はわたしの愛するかわいいおばあちゃん
手を引き終えて車に乗り込んでゆくその後ろ姿を
少しでも鮮明に見て憶えていたいのに
ふやけた情景はぽとぽと地に落ちて
みることができないシルエット、白銀
こわくて、母の顔は見れなかった
かあちゃん行ってらっしゃいよ
声だけは元気だった溌剌とした還暦を迎えた長女
泣いていたんだろうか、笑っていたんだろうか


行ってらっしゃいといつまでも手を振って
わたしは、恍惚を口癖に笑っていたそうじゃないと、夏、来ないような気がして
彼女を乗せた車は近々遠く美しい星へ飛んで行く

わたしはあなたからうまれ、
かなしみとよろこびをしった
かなしみには何種類ものかなしみが
よろこびには数種類のよろこびが
そして全てに小さな切なさが添えられていることを
しった
わたしはなにもうみださず
ただ空の下を歩いている
これだけが胸を張って言える真理



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